ジャズがわかりますか

現在、朝は中級クラス、昼は初級クラス。夜は個人レッスンクラスを担当しています。

この中で、特筆すべきなのが、昼のクラスで、前にも述べたように、脱力系、無気力系、無感動系、無反応系の学生が集まっています。話したくないなのか、ただ楽をしたいからなのか、その原因ははっきり分かりませんが、教科書に従って質問しても、また、どのような角度から攻めても、一度、教えた表現ばかりを使い回してきます。

通常であれば、下記のような質問を投げれば、

わたし
春節にどんなことをしますか。
学生
花火をします。
学生
餃子を作ります。
学生
お年玉をもらいます。

と学生から色々な答えが返ってきて、それなりにクラスが温まり、盛り上がります。しかし、脱力系のこのクラスの人は、「によって」の文法を多用する傾向にあります。

わたし
春節にどんなことをしますか。
学生
場所によって違います。
学生
人によって違います。
わたし
週末、デパートは人が混んでいますか。
学生
デパートによって違います。

彼らの言っていることは、決して間違いではなく、むしろ、模範解答どおりに回答するよりも正しいと思うことがほとんどです。

わたし
電車に財布を忘れたら、どうしますか。
学生
状況を見て、判断します。

あと、最近の出来事などをいくら聞いてみても、定番の黄金カードを出してきます。

学生
特に印象に残っていません。

教室活動だけでなく、彼らの宿題にも珍回答が散見されます。

昨日の宿題

  • 問  題 切符をなくしたら、駅員(  )言ってください。
  • 模範解答 切符をなくしたら、駅員( に )言ってください。
  • 学  生 切符をなくしたら、駅員( と )言ってください。

何かをなくした時に唱える呪文です。

  • 問  題 会議室は鍵が(         )から、いつでも入れますよ。
  • 模範解答 会議室は鍵が( かかっていません )から、いつでも入れますよ。
  • 学  生 会議室は鍵が(  壊れています )から、いつでも入れますよ。
管理がずさんな会社です。

  • 問  題 このかばん、ずいぶん重いですね。何が(     )んですか。
  • 模範解答 このかばん、ずいぶん重いですね。何が( 入ってる )んですか。
  • 学  生 このかばん、ずいぶん重いですね。何が( 付いてる )んですか。
漬物石みたいな物が鞄にぶら下がっているようです。

自由作文では、

バースで学校へ来ます。
メーモしながら電話します。

みたいな間違えは日常茶飯事です。

また、「名詞 が わかります」の文型で、
学生同士質問させた時、

模範解答は、「英語がわかりますか」「日本語がわかりますか」などですが、ある学生は、

学生
ジャズがわかりますか。
と質問していました。

一般人はもちろんのこと、ジャズに精通しているプロのジャズミュージシャン人でさえも、もし、「ジャズがわかりますか」と問われれば、答えに窮してしまいそうな質問です。

このような個性的な連中が集まっているクラスですが、毎日3時間、約2ヶ月顔を合わせているだけあって、たまにクラス活動がやんわり、ふわっと盛り上がったり、学生同士が助け合ったりする場面が見られるようになりました。

昨日、ある文法事項を教えていた時、嬉しい出来事がありました。日本語の初級で教えるのが難しいと言われている文法事項に、「名詞に 名詞が 他動詞あります」があります。例(壁にカレンダーが掛けてあります)

昨日は文型を教える際、さらっと説明して、練習に入ろうと思ったら、一人の学生から以下3文の違いの説明を求められました。

①エアコンがついています。
②エアコンをつけています。
③エアコンがつけてあります。

日本語教師として失格ですが、この3文を見た瞬間、頭の中が真っ白になり、完全にフリーズしてしまいました。たじたじになりながら、中国語でその説明をしましたが、質問した学生は腑に落ちない様子です。

その時、一人の普段は誰にもまして超脱力系の学生が、私が困っているのを見てかはわかりませんが、助っ人に入ってくれ、質問をした学生に中国語で説明してくれていました。もちろん、彼も正確に理解できているかは分かりませんが。

それでも、彼のおかげで、質問した学生も「少し分かりました」と言ってくれ、彼のおかげで、何とか難局を乗り切ることができました。

日本語教師として失格だと思いますが、日本語独特の言語表現、特に彼らの母国語で訳しきれないニュアンスに関しては、これからの長い学習人生の中で少しずつ理解できればよく、今すぐに分からなくてもいいと考えているので、「少し分かりました」で十分だと思いました。

「たしの知るところは、今は一部分に過ぎない。しかしその時には、私が完全に知られているように、完全に知るであろう。

カナンの地は今日も輝いています。