ギトギトの濃厚硫黄系スープのお話

先日、得も言われぬ不快なにおいを嗅いでしまいました。連休明けに授業をした時から、教室内に嫌な臭いが漂っていることに気づきました。しかし、教室内を見渡しても、特に悪臭の元となるようなものはありません。

大変失礼な話ですが、その時は学生の体臭かと思い、特に気にかけませんでした。本当に失礼な話です。申し訳ありません。

四日後、その教室で再び授業をしましたが、やはり不快な臭いが鼻をついてきます。授業が終わってから、異臭のことを学生に言うと、学生も口をそろえてくさいと言います。

学生は、以前教室内にあった食べかすの残り香が、漂っているだけだと言いました。私にはとても残り香とは思えません。私はその他五感は全く駄目ですが、嗅覚だけは誰よりも自信があります。

結局、火の無い所には煙は立たぬということで、学生と一緒に悪臭の発生源探しが始まりました。教室内はもちろん、学生の机の中もすべて確認しましたが、発生源は一向に見つかりません。

ある学生がエアコン内でねずみが死に、腐乱臭を放っている可能性があると言い出しました。気持ち悪いこと言うなよと思いながら、みんなでエアコンを確認しましたが、幸い、エアコン内に異常は確認できず、また、悪臭がエアコン内から発生しているようでもありませんでした。

諦めかけた時、何気なく一番前の席の下をのぞいてみました。そこには、大量のプリントが詰まっており、プラスチック容器がありました。容器を引っ張り出したとたん、中から白く濁った大量の汁が溢れ出して来ました。

数日放置系の食べ残しの弁当箱です。

私は思わず悲鳴を上げ、すぐその場を離れ、悪臭元確認の事実だけを学生に伝え、用事があったので事務所へ一旦戻りました。しばらくしてから教室に戻ると、教室内は既に言語に絶する臭いで満たされていました。

  • 卵系の腐乱臭です。
  • ギトギトの濃厚硫黄系スープです。
  • 吐き気を催す刺激系白色スープです。

私はこれまでの人生で、色々な悪臭を嗅いできましたが、これは、間違いなく五本の指に入るレアもののつわものでした。学生たちを見ると、みんな片手で鼻を押さえ、苦虫を噛み潰したような顔をしていました。空気感染を恐れるかのように、急いで荷物をまとめて教室から脱出しようとしているところでした。

無事脱出できましたが、時既に遅し、数秒開け放たれたドアから、悪臭が廊下へと広がっていました。異変に気づき、先生が数名集まってきましたが、みんな顔を歪ませて、何もせず、無言で現場から離れ去っていきました。

私たち学生も、別の教室へ避難していました。学校の建物内に嘔吐をもよおさせる臭いが充満していました。結局、このままではらちがあかないということで、悪臭処理班を現場へ派遣することになりました。

本人の意思は一切尊重せず、前線へ派遣されるのは二人の男子学生に決まりました。二人も腹をくくったようで、それぞれビニール袋を手にして、大きく深呼吸したあと、飛び出して行きました。彼らの働きは素晴らしく、見事、弁当箱回収に成功し、屋上にあるゴミ箱へ持っていってくれました。

ただ、問題の教室内の悪臭は残ったままで、においは解消されなかったので、問題の教室はしばらく封印されることになりました。受付の女性が、悪臭吸収作用があるというので、暫定処置として、巨大なたまねぎ一個と、みかんの皮を数枚を現場に放り込み、事なきを得ました。

嗅覚に自信がある私としては、弁当の発見が遅れてしまったことが悔やまれてなりませんでした。もし、四日前に異変に気づいていれば、被害を最小限に抑えることができたはずです。この度、自分の嗅覚も本当頼りにならないと実感しました。

鼻で息をする人間に頼ることをやめよ。そんな者になんの値打ちがあろうか。

カナンの地は今日も輝いています。