強制連行された学生たち

同僚の先生
みんな連れて行かれたのかもしれない。

日本人に中国語を教えている中国人の先生が、携帯電話を見ながら不安そうにつぶやきました。

行方不明
音信不通

昨晩、私の学校付近の日本式カラオケ(キャバクラ)を対象に大規模な風俗営業一斉摘発が実施されたようです。数百名近くの警察が現場に集まり、警察隊は一斉に店に突入、店にいた者は逃げるまもなく連行されたようでした。今年の初めに実施された風俗営業一斉摘発以来の比較的大規模なものです。

冒頭の中国人の先生の話によると、今日は数名の日本人相手に中国語を教える予定ででしたが、何名かの日本人学生は授業に来なかったそうです。このような無断欠席はこれまでに一度もなく、いつもであれば、必ず事前に連絡があったそうです。

でも今回は学生にメールを送っても返事はなく、携帯に連絡しても、誰も電話に出ないそうです。その中国人の先生の話によると、女性店員と一緒に日本人も連行された可能性が高いと言っていました。

私の学校周辺には多くの日本式カラオケ屋があるため、当校の主要顧客の中には、そこで働く女性店員や日本人客が含まれています。

当校の日本語学習者の傾向は下記三つに分類されます。

  1. 日本のアニメが好き
  2. 日本へ留学予定がある
  3. 日本人の彼氏がいる(日本式カラオケの従業員)

クラス全体における各項目の割合はほぼ均等で、それぞれ、30%くらいです。そのため、当校の学生の約30%は強制連行された可能性が高いです。風俗営業摘発とは言いつつも、対象となったお店は、女性が男性の隣に座ってお酒を飲むお店です。

ただ、中国のキャバクラでは、場所によってはその他業務を行っている所があるため取締りの対象となっているようです。以前でしたら、警察の取締りが実施されるときも、形式的な取締りだけであって、事前に取締りの日程が店に通知され、取締りの時だけ、店を閉店するという方法で営業を続けていたようです。

今回のような事前連絡なし、本格的、かつ大規模な取締りは国家主席が習近平になってからだそうです。ちょうど、一昨日、四中全会(中国共産党第18回中央委員会第4次全体会議)が終了したばかりです。

会議の中で、改めて、「法に依りて、国を治める」、「徹底的に司法改革を推し進める」といった方針を強調していました。昨日の取り締まりもこれら方針の一環で実施された可能性も否定できません。

習近平は就任以降、大々的な腐敗撲滅キャンペーンを実施しており、これまでに多くの官僚が失脚し、党籍剥奪、刑事責任を問われています。そして、驚くべきことにその対象は、元政治局常務員の周永康にまで及びました。中国に三権分立はなく、共産党の組織の支配下に公安、裁判所、検察所があるため、共産党の元トップクラスの者が、法に依って裁かれるということはこれまであり得ないことでした。

腐敗がなくなるのかどうか、その効果は別にして、中国ではこれらの流れのもとで、大きな変化が起きてきていることは確かです。これら流れは中国の家庭教会にとっても、決して対岸の火事ではありません。

中国では憲法で宗教信仰の自由は保障されているとはいいつつも、中国には日本のように宗教法人法がなく、宗教の立法化がなされていないため、法に依って、正当な合法的権利を主張することは困難です。

政府は、依然として宗教事務条例や社会団体管理条例などの条例によって、管理重視の宗教政策を実施しています。政府は「正常な宗教活動」を保護する義務があるが、「どういった宗教活動が正常なのか」については非常に曖昧なままです。

家庭教会に関していえば、宗教の立法化なくして、法に依りて治めることは不可能です。不当な取締りがあった場合、教会側は憲法の条文だけで裁判で戦うことはできません。

「徹底的に司法改革を推し進める」ことによって、宗教の立法化がなされ、「法に依りて、国を治める」ことによって、条例ではなく、法律によって、中国のクリスチャンの合法的権利が守られることを願ってやみません。

おのが道を全くして、主のおきてに歩む人は幸いである。

カナンの地は今日も輝いています。