中国のB-BOY

昨日、礼拝を終えた後、一人で教会付近のジャスコ内をうろうろしていると、遠くのほうから大音量で低音を刻む音楽が聞こえてきました。

一体何事かと思って、そちらへ行くと、ジャスコの正面入り口を入った所にある広場に、特設ステージが設置されており、数人の子供たちが音楽に合わせて、元気よく軽快にストリートダンスをしていました。

ステージ上にある看板からの情報によると、どうやら東莞市内のダンススクールのイベントのようで、
受講生が日ごろの練習の成果を発表するために踊っているようでした。そして、MCの話では、午後1時からバトルが予定されているようでした。

私は今でこそ中国のキリスト教にしか興味が無いただのおっさんですが、若き頃はB-BOYとして、週末は深夜遅くまでブレイクダンスの練習に励んでいました。

B-BOYはブレイクダンスをする男性を指す。女性はB-GIRLと言う。

午後からは何も予定が無かったので、中国のダンス事情を理解するためにも、見学してやろうと思いました。正直に話せば、大変失礼な話で、性格悪いの丸出しなのですが、私が期待したのは、彼ら彼女らの技術的なものではなくて、どれだけ私を笑わせてくれるか、言い換えれば、どんな醜態を見せてくれるのか、というところにありました。最低です。

12時半ごろから、B-BOYと思われる男たちが、どんどん集まってきました。ちなみに、バトルは登録制なので、某ダンススクールの受講生以外も参加可能です。

まず、私を驚かせたのが、服装がきちんとしていたことです。見たところ、恐らくほとんどが90後と言われる90年代生まれの若者たちでした。彼らの容姿からは中国人とは判別できないほど洗練された身なりをしていました。

もし、当日、私と彼らを立たせて、中国人だと思うほうを指で指せと問えば、ほとんどの人が私を指すと思います。そして、登録を済ませたB-BOYたちが、ステージの端のほうにある空間で練習を始めました。

彼らの練習には、はなっから期待していませんでしたが、彼ら90後は見事に私の期待を裏切ってくれました。まず、数名の90後は私が2年間練習しても成し得なかったトーマスフレアをいとも簡単にやってみせました。

トーマスフレアとは両手だけを地面につけ、開脚旋回する技。あん馬の開脚旋回と同じ。

次に、単発だけでなく、トーマスフレアからウィンドミルへ、そしてエアーへとルーティーンも完璧でした。

ウィンドミルとは、身体は地面に対して平行で、頭部を地面につけ、頭部を軸に開脚旋回する技。
エアーとは、逆立ちの姿勢から両足を開脚し、軸手を変えながら、はねるように回転する技。
ルーティーンとは、単発の技を勢いを落とさず連結させること。

専門用語が多くなりますが、その他、エアータートルやヘッドスピンやワンハンドラビットなど、パワームーブを軽くこなしていました。ご存知である方はご存知だと思いますが、ご存知でない方はご存知でないと思います。

エアータートルとは、身体は地面に対して平行で、両手だけで身体を支え、軸手を変えながら回転する技。
ヘッドスピンとは、身体は地面に対して垂直で、頭部のみで回転する技。
ワンハンドラビットとは、逆立ちの状態で片手だけで身体を支え、さらに跳ね続ける技。
パワームーブとは、力を必要とする技の総称、上記技はすべてパワームーブに属する。

私が現役でやっていた頃は、周囲にエアーができる人などおらず、生のエアーを見たことはありませんでした。もちろん、私がやっていた頃は、既に10年前で、今ではブレイクダンス界の全体的なレベルは相当底上げされていると思います。

私は彼らに対して下していた過小評価を改め、自分の歪んだ性格を反省し、尊敬の念を持って見るようになりました。そして、いよいよバトル開始。

バトルはジャンル別に分かれており、それぞれの参加者は、ポッピンが40人、ブレイキンが50人、ヒップホップが20人でした。まず、見ていて感じたのが、ただただ若いということ。この発言が、既におっさんですが、彼らの中に充満し切っている純粋で新鮮な内的エネルギーが、爆発し、外に現れているようでした。

だいたい、ダンス、殊にブレイクダンスを始める人のほとんどは、目立ちたがり屋の人だと思いますが、表現してやろう、見せつけてやろう、驚嘆させてやろう、感激させてやろう、惚れさせてやろう、このやろう感が、彼らの表情や動きから噴出されていました。

私は、ポッピンとブレイキンだけを鑑賞し、ヒップホップは見ずに帰宅しました。

思わぬところで中国の若者から元気をもらい、さらに中国人B-BOYに抱いていた軽蔑感や侮蔑感や偏見が取り除かれ、雌鹿が雄鹿と野原ではしゃぎまわるような軽い足取りで帰宅しました。

私たちの頭の中にある、中国人という言葉に付随しているイメージはどのようなものでしょうか。私が中国人の若者がかわいそうに思うのが、一部の中国人のイメージで彼らも見られてしまっていることです。

その反対もしかりです。

80後は改革解放後に生まれた世代で、日本の80年代生まれの人たちと多くの共通言語をもっています。

ルフィは中国でもルフィ
Cコードは中国でもCコード
ウィンドミルは中国でもウィンドミル

ありきたりの言葉で言えば、文化の共通言語で、国を超えて、交流し、ぶつかり合うことができると思います。ブレイクダンスのルーツは喧嘩にあり、その表現するところには、非常に攻撃的なところがありますが、ブレイクダンスののいいところは、B-BOY同士がバトルをしていても、素晴らしいパフォーマンスに対しては、たとえ敵であっても、片手を上げ、手を振り、賞賛の意を素直に率直に示すところにあります。

日本人も中国人もお互いがこのような気持ちで接することができればと思います。

何事も利己心や虚栄心からするのでなく、へりくだって、互いに相手を自分よりも優れた者と考え、めいめい自分のことだけでなく、他人のことにも注意を払いなさい。

カナンの地は今日も輝いています。

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