エレベーターに閉じ込められた時の話

いつかはこういうことが起きるかもしれないということは、頭の中では理解していた。

先週の日曜日、大雨の降る中、23時ごろにバベルの塔に到着した。疲れが溜まっており、早くシャワーを浴びて、休みたかったため、足早にA棟へ向かった。

幸い、エレベーター付近に放し飼いの犬や周囲無視の喫煙住民はおらず、ほっとした。しかも、3基あるうちの1基が、ちょうど1階で停止していた。

今日はついている。

上昇のボタンを押すと、停止中のエレベーターの扉がゆっくり開いた。いつものようにエレベーターに乗り込み、居住階数の9階のボタンを押すと、また、ゆっくり扉がしまった。壁にもたれかかって、9階に到着するのを待った。

数秒後、異変に気づき始めた。
何かがおかしい。

まず、9階のボタンを押しても、ボタンは何も反応していなかった。

通常であれば、押したボタンのランプが赤色に点灯し、すぐ上昇を始める。

赤く点滅するべき9階のボタンは、死んだように灰色のままだった。

慌てて、何回もボタンを押したが、やはり、反応せず、エレベーターも一向に上昇してくれない。頭を上に上げ、所在階数を示す電光板を見て、思わず足が震えた。

エレベーターは動いていないのにもかかわらず、電光板は既に5階を表示していた。

危機感を感じた。
すぐに、脱出しないといけないと思った。

気がくるったように、乱暴に、何度も、開門のボタンを押したが、はやり反応がなく、開かない。他階のボタンを押したが、はやり反応がない。押せるだけのすべてのボタンを押したが、エレベーターは沈黙を貫き通した。

諸々の状況から、頭が現実を受け入れ始めてきた。ついにこの時を迎えた。

監禁。

次にできることは、緊急連絡のボタンを押すこと。一応押してみたが、予想通り、反応はなかった。ゴールデンウィークのためか、時間が深夜のためか、そもそも、これは飾りのためなのか、ともかく、原因は分からないが、相手の声が聞こえるべき所からは、何も聞こえなかった。

いちばん避けたかったのは、
エレベーターが暴走し出し、

中途半端に上昇を始め、
中途半端な階で停止すること。

そして、考えうるいちばん最悪のシナリオは、そこそこ上昇した後、そのまま落下することだった。

中国では何でもあり得る。

外から扉を開けてくれる人を待つしかなかった。以前なら、休むことなく、ひっきりなしに稼動していたエレベーターであったが、風俗営業一斉摘発後、バベルの塔の住民が激変したこと、また、ゴールデンウィーク中で外出している人が多かったこともあり、外部から、扉を開けてくれる人は一向に現れてくれなかった。

そのまま、一生でいちばん長い5分が経過した。

自分が閉所恐怖症じゃなかったことだけが、唯一の救いだった。

もうらちがあかない。

最後の手段。
手動での開門。

数週間ジムで鍛えた上腕二頭筋がうずいた。

両手の甲を縦にし、センターで合わせ、左右の扉が合わさっている隙間に手の平を入れた。一気に力を入れ、扉の左右に力を加えた。思いのほか、扉はやすやすと動き始めた。

これは、いける。

そのまま渾身の力を加え続け、扉を左右に押しのけるようにして、意外に簡単に開門に成功した。しかし、不機嫌なエレベーターが、急に動き出す可能性も考えられたので、プレス アンド カットされないように、最後まで気を抜かず、内部と外部の接点を素早く跨いだ。

助かった。

ジムで両腕を鍛えておいてよかったと思った。どんな時に、どんな能力が役に立つか分からないと思った。

備えあれば、憂いなし。

「聖書は、すべて神の霊感を受けて書かれたものであって、人を教え、戒め、正しくし、義に導くのに有益である。それによって、神の人が、あらゆる良いわざに対して十分な準備ができて、完全に整えられた者になるのである。」

聖書の言葉は、
監獄(死の力)から逃れさせる力がある。

カナンの地は今日も輝いています。

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